聖火
「殿様、流行病がじわじわと拡がってまいりましたが、どのようにいたしましょう?」
「庶民が何人死のうが知らんわ」
「殿様、異国では銭を配っているそうです。庶民も銭を配れと巷で騒いでいるそうです」
「ええい、厚かましいやつらじゃ。布で口を塞げ」
「殿様、布をこしらえる際につかった税をかすめとったことが気付かれそうです」
「ふん、どうせ不満は口に出すだけで一揆など起こさないだろう。刀は狩りられたが言葉は狩りきれんな。馬鹿犬どもが。すこし銭でもばらまくか。」
「殿様、流行病を患った者が1万を超えたそうです。百姓も病を恐れて店をたたんでいるようで」
「あんなやつら何人死のうが知らんわ。しかし奴隷が減って税収が不足するとフグが食べられなくなるな」
「殿様、庶民たちが火炎瓶を投げ始め、そろそろここも…うわぁ!」
「おい、どうした!うわぁ!」
この年、ある島国では病と人災は火によって片がついた。
幕府の燃える様は美しく、僅かに生き残った者たちは酒を飲み、祭を始めた。